ピンとくるノート

くるウサの日記です。

変態あやねこの調教日記 1 猫になりきりたい女(1/2)

「趣味は、読書と引きこもり。彼女がいるので、男はいりません。」合コンで自己紹介するときには、決まってこう言う。あたしには同居しているカノがいるし、合コンなんて興味がないのだが、タダ飯が食えるのなら、喜んで参加する。
今回はどうも、本気で交際したい女が主催らしい。一月前に別れた男と重なって、実に腹立たしい。まあしかし、最近カノともうまく行ってないので、最近気になってるミクちゃんを引っ掛けてみるか、なんて期待も、していたりする。
時は年末。今年の仕事も収まり、これから休みも続くので、ベロンベロンに飲むにはちょうどいい日である。駅前の待ち合わせの場所には、男ら二人が待っているようだった。絡まれるのも嫌なので、しばらく影からこっそりと、女達が来るのを見計らっていた。
しばらく待つと、女側で参加する3人が、揃ってやってきた。主催のやりマン女と、狙い目のミクちゃん、後一人は顔の知らない子だった。猿のようなリーダー格の男が、ニンマリとミクちゃんと会話していたところに、あたしは割り込むように現れ、ミクちゃんを奪った。
店の中へ入る。先に男が一人入っていた。一人でスマホに熱中してるあたり、コミュ障なんだろう。少しして、デブとおっさんの男らもやってきた。これで、全員集まったのか。
ミクちゃんと初見の子を除いて、みんなハズレのような顔に感じた。もちろん、あたしは入らない。同じレベル同士、やりマンを5人で取り合ってろ、と。つか、おっさんは既婚者かよ。おいおい大丈夫か。
乾杯をしたあと、ビール片手にゴクゴクと飲み干す。うまい。男側が出すという条件なので、いくら飲んでも財布は傷まない。お通しも、揚げ物も、食べられるものは食べておく。女の気品など、今のあたしには必要ない。むしろない方が、男が寄ってこなくて、ちょうどいい。
ビールを2杯3杯飲み干し、酔いが回る。気張っていた神経も、どことなく崩れ始める。・・甘えたい、猫のように甘えたい。一月前に別れた、あの男のせいだ。あいつと付き合ってから、甘えるなんていう麻薬を、植え付けられてしまったんだ。そう思うと、腹ただしくなって、余計酒を入れるようになった。
男なんて、ただやりたいだけの、精子脳なんだ、付き合うなら、隣のミクちゃんのような、世話好きなお姉さんタイプに甘えたいにゃあ・・。ミクちゃん揺さぶって、そっちの道に誘っちゃおうか・・、女の子の扱いなら、あたし得意だから・・
そんな中、男の中でにゃあにゃあと鳴く声が聴こえる。ああ、あのコミュ障か。・・酒によったのをいいことに、猫みたいに歩きやがって。・・いいなあ。本当は、あたしがしたいのに。クールなイメージがある、あたしがやったら、笑いものだ。それなのに・・
ミクちゃん、やだよ・・そんな男に構わないで。あたしをかわいがって、欲しがって・・。ミクちゃんとあたしの間に割り込まれた。きっと、このコミュ障はミクちゃんを狙っているのだろう・・。ミクちゃんに振り向いてもらいたくて、思わず、にゃあと鳴いた。
「にゃ?」コミュ障が反応した。ふにゃあ・・お前じゃにゃい・・。呆れた、あたしかよ。狙ってたの。どうせ、こういうのは、すぐに飽きて、他の女に飛びつくのがオチだ。こいつは猫なのだから、猫語でお帰りしてもらうよう、言いつけてやろう・・。
・・まあ、今考えるとおかしな話だが、酒に酔ってたせいで、ひねくれた思考に堕ちいっていた。にゃあといえば、にゃあと返される。無理せんでもいいのよ、早く人間に戻れと思っていても、微動だにしない。むしろ、さっきよりも喜んでる・・変態か、変態にゃのか・・
コミュ障との距離が縮まっていく。にゃあ、にゃあ・・心の隅っこで抑えこまれた猫の本能が、こいつによって引き出される・・。「猫になりたいの?」って言われたから、思わず素が出て、うん、と応えてしまった。やばい、もう、本音を隠し切れない・・あたしは猫だ、猫にゃのだ・・
今なら、アルコールに踊らされてたと、言い訳ができる。コミュ障だって、べろべろに酔ってたと、言い訳するはずだ。今だけ、本能のままに、にゃあにゃあ鳴いて、時間が過ぎたら、シンデレラのように、夏の夜の夢のように、魔法が解けて、夢から醒めて、元に戻るだろう・・
そんな夢の中でふけろうと思った時だった。「ねえ、首輪とかつけて、猫になりきってみない?」電気が走るような衝撃だった。事実上のお持ち帰り宣言しやがった。
お前ら、こいつを止めてくれよ。勝手にカップル認定してるんじゃない。ただ、猫にされてるだけだ・・猫になって、首輪されて・・違うにゃ、期待してはいない、どうせこいつも猫を口実にした、体が目的だけの下衆だにゃ・・
むちゃくちゃだ。猫を口実にとは意味がわからない。酒に酔ってたとはいえ、もう少しまともな思考ができなかったものか・・。こいつのされるがままに、タクシーに乗らされる。行き先は、カラオケだった。少し安心した。